薬剤耐性HIVインフォメーションセンター

薬剤耐性の問題How to read the resistance mutations

治療の現状と問題点

表1 日本で承認されている抗HIV薬(2025年3月現在)
一般名 商品名 略称 承認時期(日本)
核酸系逆転写酵素阻害剤(NRTI)
ジドブジン レトロビルカプセル AZT
またはZDV
1987年11月
ジダノシン ヴァイデックスECカプセル/錠 ddI 1992年7月
ザルシタビン ハイビッド錠 ddC 1996年4月
ラミブジン エピビル錠 3TC 1997年2月
サニルブジン ゼリットカプセル d4T 1997年7月
ジドブジンとラミブジンの合剤 コンビビル配合錠 AZT/3TC
またはCOM
1999年6月
アバカビル ザイアジェン錠 ABC 1999年9月
テノホビルジソプロキシルフマル酸塩 ビリアード錠 TDF 2004年4月
アバカビルとラミブジンの合剤 エプジコム配合錠 ABC/3TC
またはEZC
2005年1月
エムトリシタビン エムトリバカプセル FTC 2005年4月
エムトリシタビンとテノホビルジソプロキシルフマル酸塩の合剤 ツルバタ配合錠 TDF/FTC
またはTVD
2005年4月
エムトリシタビンとテノホビルアラフェナミドの合剤 デシコビ配合錠LT・HT TAF/FTC
またはDVY
2016年12月
非核酸型逆転写酵素阻害剤(NNRTI)
ネビラピン ビラミューン錠 NVP 1998年12月
エファビレンツ ストックリンカプセル/錠 EFV 1999年9月
デラビルジン レスクリプタ一錠 DLV 2000年5月
エトラビリン インテレンス錠 ETR 2008年12月
リルピビリン エジュラント錠 RPV 2012年5月
リルピビリンとエムトリシタビンとテノホビルジソプロキシルフマル酸塩の合剤 コムプレラ配合錠 RPV/FTC/TDF
またはCMP
2014年12月
リルピビリン、エムトリシタビン、テノホビルアラフェナミドの合剤 オデフシィ配合錠 RPV/TAF/FTC 2018年8月
リルピビリン リカムビス水懸筋注 RPV 2022年5月
プロテアーゼ阻害剤(PI)
インジナビル クリキシバンカプセル lDV 1997年4月
サキナビル インビラーゼカプセル/錠 SQV‐GC 1997年9月
サキナビル フォートベースカプセル SQV‐GC 2000年5月
ネルフィナビル ビラセプト錠 NFV 1998年3月
リトナビル ノービア錠・ソフトカプセル/リキッド/ RTV 1999年9月
ロピナビル(少量リトナビル含有) カレトラ配合錠/ソフトカプセル/リキッド LPV/r 2000年12月
アタザナビル レイアタッツカプセル ATV 2004年1月
ホスアンプレナビル レクシヴァ錠 FPV 2005年1月
ダルナビル プリジスタ錠/プリジスタナイーブ錠 DRV 2007年11月
ダルナビルとコビシスタットの合剤 プレジコビックス配合錠 DRV/c
またはPCX
2016年11月
ダルナビル、コビシスタット、エムトリシタビン、テノホビルアラフェナミドの合剤 シムツーザ配合錠 DRV/cobi/TAF/FTC(またはSMT) 2019年6月
インテグラーゼ阻害剤(INI)
ラルテグラビル アイセントレス錠 RAL 2008年7月
エルビテグラビルとエムトリシタビンと
テノホビルジソプロキシルフマル酸塩とコビシスタットの合剤
スタリビルド配合錠 EVG/cobi/TDF/FTC
またはSTB
2013年5月
エルビテグラビルとエムトリシタビンと
テノホビルアラフェナミドとコビシスタットの合剤
ゲンボイヤ配合錠 EVG/cobi/TAF/FTC
またはGEN
2016年6月
ドルテグラビル テビケイ錠 DTG 2014年3月
ドルテグラビルとアバカビルとラミブジンの合剤 トリーメク配合錠 DTG/ABC/3TC
またはTRI
2015年3月
ドルテグラビルとリルピビリンの合剤 ジャルカ配合錠 DTG/RPV 2018年11月
ビクテグラビル、エムトリシタビン、テノホビルアラフェナミドの合剤 ビクタルビ配合錠 BIC/TAF/FTC(またはBVY) 2019年3月
ドルテグラビルとラミブジンの合剤 ドウベイト配合錠 DTG/3TC 2020年1月
カボテグラビル ボカブリア錠 CAB 2022年5月
カボテグラビル ボカブリア水懸筋注 CAB 2022年5月
CCR5阻害剤
マラビロク シーエルセントリ錠 MVC 2008年12月
カプシド阻害剤
レナカパビル シュンレンカ皮下注 LEN 2023年8月
レナカパビル シュンレンカ錠 LEN 2023年8月

ページトップへ

図1 現在使用されている抗HIV治療薬剤の種類と作用点

図1 現在使用されている抗HIV治療薬剤の種類と作用点

ページトップへ

図2 薬を複数組み合わせると治療効果が高まる理由とは

図2 薬を複数組み合わせると治療効果が高まる理由とは

多剤併用療法は大変優れた治療効果を示し、HIV/AIDS患者の予後を大きく改善した。

ページトップへ

図3 多剤併用療法によってHIV/AIDSによる死者は激減した

図3 他剤併用療法によってHIV/AIDSによる死者は激減した
(アメリカ CDCから引用)

多剤併用療法が行われるようになって死亡者の数は3分の1に減少した。しかしその後は下がることがなく、4~5名/10万で推移している。
これには次のような理由が考えられる。

  1. 治療開始の遅れ
  2. アドヒアランス
  3. 副作用
  4. 薬物動態
  5. 薬剤耐性
  6. 合併症

ページトップへ

図4 体内に侵入したHIVを根絶するには、どのくらいの時間がかかるのだろうか?

図4 体内に侵入したHIVを根絶するには、どのくらいの時間がかかるのだろうか?

多剤併用療法の恩恵を得るのは容易ではない。治療を始めたら厳格な服薬(95%以上の服薬率)を一生続けることが求められる。
療薬剤には深刻な副作用を示すものが多数あり、副作用のために服薬中止を余儀なくされることもある。
さらに治療薬剤に対して耐性を獲得したウイルスの出現も、治療を妨げる大きな問題である。
従って、治療を開始した患者の実に20~40%が、治療に失敗すると報告されている。
Paterson DL, 2000, Bangsberg DR, 2006

その原因の中でも薬剤耐性ウイルスの出現は、その後の治療薬剤の選択を大幅に制限するために深刻な問題となっている。